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MEDICAL NOW No.60

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オーダーメイド医療の実現に向け高い期待が寄せられている分子イメージング。近年,その実用化に向けた研究が世界的に進められており,当社においても分子イメージングを中心とした次世代医療への取り組みを進めています。
今年5月,日本国内において初の分子イメージングに関する学会として産官学が連携した「日本分子イメージング学会」が設立され,設立総会ならびに第1回学術集会が開催されました。今回,日本分子イメージング学会藤林靖久会長に同学会設立の背景や今後の展望をご紹介頂きます。

分子イメージング研究
−日本における学会設立と分子イメージングの現状・将来−

日本分子イメージング学会・会長
アジア分子イメージング学会連合・事務局長
福井大学高エネルギー医学研究センター・センター長
放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター・副センター長
藤林 靖久

分子イメージングの現状

生命科学,特に分子生物学の急速な進展とともに,生命をより深く理解するには従来の細分化を指向する学問の成果をin-vivoに戻して評価・利用する必要があるのではないかという考え方が広まってきている。イメージング(画像化)技術は,in-vivoのような複雑系の中で特定の現象を把握するに有用であると考えられ,基礎・応用生命科学の世界で,イメージングを目的とする,あるいはイメージングを利用する研究が多く見られるようになっている。「分子イメージング」は,これらを広く包括する研究分野として提案された概念であり,現在では「生体内で発生した分子・細胞レベルでの現象を非侵襲的に検出し画像化する技術の開発ならびにそれらの利用」という定義が一般に受け入れられている。
分子イメージング研究には,生命科学,基礎・臨床医学,画像診断学のみならず,分子プローブの開発に関連する化学生物学,信号検出原理やそれに伴う要素技術の開発,画像機器の開発,画像処理に関わる情報工学などが含まれる。従来の学問分野が再分化,精細化の方向を向いているのに対して,分子イメージングには多分野融合研究というベクトルを持っているといえる。
分子イメージングそのものは生命現象の理解という大きな方向性を持っているが,同時に,実験動物モデルからヒト疾患までをシームレスに評価できる特徴は新しい疾患診断技術や医薬品の開発に大きく貢献できると考えられる。このような学問的・経済的重要性をいち早く認識した米国では,2000年末には,当時のクリントン大統領が国家プロジェクトとして「生体医学画像(Biomedical Imaging)と生体工学(Bioengineering)を統合・強化するため,国立衛生研究所(National Institutes of Health,NIH)に新たにNational Institute of Biomedical Imaging and Bioengineering(NIBIB)を設立することを認め,以来年間数百億円以上の予算が投入されている。これとは別にNIHの研究所のひとつである国立がん研究所(National Cancer Institute,NCI)でも,生体分子細胞イメージングセンター(In Vivo Cellular and Molecular Imaging Center,ICMIC)(http://imaging.cancer.gov/programsandresources/specializedinitiatives/icmics),小動物イメージング拠点(Small Animal Imaging Resource Program, SAIRP)を全米数箇所に指定し,重点的に研究環境を整備している(http://imaging.cancer.gov/programsandresources/specializedinitiatives/SAIRP/)。また,国立精神衛生研究所(National Institute of Mental Health,NIMH)も,分子イメージング部(NIMH Division of Intramural Research Program: Molecular Imaging Branch)を設置し,積極的に研究を推進している状況である。
一方,ヨーロッパではEU諸国を中心に各国の研究拠点を有機的に結合し研究促進と研究者養成を図るため,ヨーロッパ分子イメージング研究所連合(European Molecular Imaging Laboratories,EMIL)(http://www.emilnet.org/)が結成され,Network of Excellenceの形で活動を開始している。本年には第1回ヨーロッパ分子イメージング学会がパリで開催され(EMIL HP内に詳細あり),ヨーロッパがひとつの研究体として結集することが明らかとなってきている。