Minimally Invasive Experience

記事

3DCTとアンギオシステム連携によるDCA時の至適Cアームアングル

豊橋ハートセンター 循環器内科
羽原 真人

1. はじめに

2015年5月当院に島津製作所製Trinias MiX(以下Trinias)が導入され、現在PCIおよびEVTのメインマシーンの一つとして活躍している。DCA(Directional Coronary Atherectomy)施行に関してもTriniasは非常に有用な性能を有しており当院において第一選択のマシンとなっている。今回DCA施行時に求められるアンギオ装置の性能と、Triniasの有用性について症例を交え提示する。

2. 冠動脈穿孔

DCAを行うにあたって最も注意すべき合併症は冠動脈穿孔である。発生頻度は0.3%程度と他治療手技と比較し決して多いわけではないが、急激に心タンポナーデとなり、時に致死的となりうる。その原因としては①長軸方向のミス(長軸方向においてプラークのない部分をカット)、②短軸方向のミス(短軸方向においてプラークのない方向のカット)が挙げられる。このためIVUS所見とアンギオ所見の対比・同期が重要で、長軸方向・短軸方向における正確なプラークの分布の把握とDCAカテーテルの正確なポジショニングおよびウィンドウのプラーク方向への正確な回転操作が重要となる。このためこれらの手技を正確に行うための詳細な画像がアンギオ装置には求められる。

3. 長軸方向の確認

以前のDCAカテーテル(Flexicut®)の外径は8Frガイディングカテーテル相当であったため8Frガイディングカテーテルを使用した場合でも、DCAカテーテルを冠動脈に挿入した後の造影は困難であり長軸方向のミスが起こりやすい状況であった。
以前のDCAカテーテルで冠動脈穿孔を合併した症例を提示する(図1)。止血後の冠動脈造影で確認された穿孔部位は標的病変より明らかに末梢であり、長軸方向においてプラークのない部分をカットしたことが冠動脈穿孔の原因と考えられた。リバイバルされた新しいDCAカテーテル(ATHEROCUT®)は7Frガイディングカテーテル適応であり、8Frガイディングカテーテルを使用した場合DCAカテーテルを血管内に挿入した状態でも造影することは容易となった(図2)。
無論、その画像についてはアンギオ装置の画像描出能にも依存する。Triniasには最新の画像処理エンジンであるSCORE PRO Advanceが搭載され、コントラストが強調される。当院はカテ室が4部屋あり、それぞれ異なるメーカーのアンギオ装置を導入している。この4機種を使用し銅板上に原液と希釈造影剤を充填したチューブを乗せ、透視とDAでコントラスト(Contrast to Noise Rat io: CNR)を測定する体外実験を行った結果、島津のTriniasが一番高かった(図3)。この画像処理により鮮明な透視画像を得ることが可能であり、TriniasはDCAカテーテルの長軸方向の位置確認においてアドバンテージを有すると思われる。

図1 長軸方向のミスによる冠動脈穿孔

Target Lesion

Perforation

止血後穿孔部

図2 DCAカテーテル挿入後も造影可能であり、良好なコントラストのため位置確認が容易

Pre

DCAカテーテル挿入後の透視像

図3 銅板と造影剤を使用した体外実験:CNR測定

銅板ファントム

原液・希釈造影剤

DA / *1 : 骨等価

CNR(Contrast to Noise Ratio)=(造影剤部分の画像値-背景の平均値)/背景の標準偏差
使用ソフト:Xcat

4. 短軸方向の確認

短軸方向のミスをなくすためには①IVUS画像とアンギオ画像を頭の中で同期させ、IVUS画像で確認した標的プラークがアンギオ画像においてどの方向にあるか把握すること、②DCAカテーテルのウィンドウをその方向に確実に回転させることが重要となる。

① IVUS画像とアンギオ画像を同期
IVUS画像とアンギオ画像を同期するためには通常以下の3つを確認する必要がある。 1:ブランチガイド 2:ワイヤーバイアス 3:ルーメンバイアスブランチガイドは特に主幹部~前下行枝のDCAの際重要となる。
一般的RAO caudal viewで対角枝は画面向こう(Far side)に中隔枝画面手前(Near side)に分岐するため、これを用いてIVUS画像とアンギオ画像を同期させる。しかしながら回旋枝や右冠動脈や、前下行枝でも症例によっては枝の見え方が異なり、バリエーションも多くブランチガイドだけでは十分とはいえずワイヤーバイアスおよびルーメンバイアスを使って方向を確立させる必要がある。図4に前下行枝入口部病変の症例を提示する。この症例において上記の3つのステップを経て、RAO caudal viewはIVUSの3時方向(黄色矢印)から見ていると考えられる。標的プラークはIVUSで3時方向(図4:⑤)であるため、RAO caudal viewでウィンドウを画面手前(Near side)に向けてDCAを施行する。
通常上記方法でアンギオ画像とIVUS画像を同期させるが、Triniasが有するSCORE Navi+PlusというCoronary CTとのコラボレーション機能を使ったブランチガイドも非常にわかりやすく今後有望である。図5に一例提示する。術前に撮影したCT画像をカテ室外のSCOREワークステーションに取り込んでおけば、1クリックでVR(ボリュームレンダリング)像・アキシャル像・コロナル像・サジタル像の4画面構成(図5:②)画像が作成される。その画像を使用しLADとseptalが一直線になるように画像を動かせばseptalが完全にこちらに向いている角度を簡単に探すことができる。この症例ではRAO31 Caudal40が最適な角度であることが術前に決めることができた。角度送信ボタンを押すことでCアームを動作させることもできる。これで中隔枝が画面手前に来ているはずなのでブランチガイドでIVUS画像との同期を容易に行うことができる(IVUS画像の11時)。同期ができたら、IVUSで標的プラークを確認しその方向にDCAカテーテルウィンドウを向ける操作を行う(図5:⑤)

図4 ブランチガイド・ワイヤーバイアス・ルーメンバイアスを用いての短軸方向の決定

  • ブランチガイド

  • ワイヤーバイアス

  • ルーメンバイアス

    IVUSはLumenの下側

    IVUSはLumenの上側

図5 SCORE Navi+Plus:アンギオ装置と冠動脈CTの連携

  • ① 当院のカテ室:Trinias Room
    *A : SCORE 3Dワークステーション
    *B : 放射線技師
  • ② SCORE3Dワークステーション
    Coronary CT画像を使用し、対角枝もしくは中隔枝が完全に水平になる角度を探す
  • ③ Cアームを動かす
    ワークステーションで角度が決まれば(この症例では中隔枝が完全に画面手前にくる角度がRAO31° caudal40°であった)送信ボタンひとつでCアームをその角度に動かすことができる
  • ④ ブランチガイドでIVUS画像と同期
    中隔枝が画面手前(Nearside)に来る角度に設定しているため、IVUSの11時から見ていることになる
  • ⑤ DCA施行
    IVUSの11時方向が最もプラークが多かったため、画面手前にウィンドウを向けてDCA施行した

② DCAカテーテルのウィンドウ方向の把握
上記のようにアンギオ画像とIVUS画像を同期させ標的プラークの向きが決定しても、実際DCAカテーテルのウィンドウが正確にその方向に向いていなければ今までの作業は無意味に終わる。DCAカテーテルのコントロールは透視下で行うわけであるが、バルーン拡張時にDCAカテーテルが動いてしまい、ウィンドウの向きが変わることが時にある。また、カテーテルを回転させると途中でトルクが溜まり、その後トルクが一気に開放され勢いよく回転してしまうwhip motionが起こることもある。したがって、DCAの際アンギオ装置にはカッターの動きおよびウィンドウの向きが正確に把握できるだけの画像性能が求められる。今回CNR測定の体外実験同様、当院の4つの装置を使用し胸部ファントム上にDCAカテーテルを張り付けカッターの動きとウィンドウの向きをどの程度把握できるか透視画像で比較した(図6)。画像評価については主観的評価になってしまうが、カッターの動きは全社とも7.5pps(pulse per second)透視で視認できるがコントラストは島津の装置が一番高い印象であった。whip motionについては全社とも7.5ppsでは正確に確認できなかったが、15ppsに上げるとある程度ハウジングが回転している様子は把握できた。このためDCA施行の際はパルスレートを15ppsに上げることが推奨される。また、15ppsの透視画像のなかで最もwhip motionが把握できウィンドウの向きが確認でたのはTriniasであった。これはTriniasに搭載される最新画像処理モーショントラッキングNRにより残像がより少なくなっていることに起因するのかもしれない。なお、ATHEROCUT®の最新のトルク改良によりwhip motionが減少し角度の微調整が可能となった、との報告もありTriniasの透視画像性能には更なる期待が持たれる。

図6 カッターの動き・ウィンドウの向きに関しての体外実験

5. まとめ

以上DCA施行時にアンギオ装置に求められる性能をいくつか挙げた。島津製作所製Triniasはコントラストが高いためDCAカテーテル挿入時の血管造影でも鮮明な画像を得ることができ、また残像が少ないためDCAカテーテルのカッターの動きやウィンドウの向きが捉えやすい。これらは他機種と比較しDCA施行の際のアドバンテージであると思われる。また冠動脈CTとの連携をシームレスに行えるSCORE Navi+Plusは、まだ未完成で未熟な部分も見うけられるが現状でも十分DCA施行に際して有用な情報を提供することができ、今後必要不可欠なデバイスに成長する可能性がある。

Trinias Today (2017.6)

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