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島津の技術、Trinias始動—上海中山医院—

2019年4月、島津の血管撮影システムTriniasが、上海復旦大学付属中山医院に正式導入され、使用が開始されました。中山医院は、中国におけるPCI発展の先駆者およびリーダーとして、年間8,000件以上のPCI症例を抱えています。Triniasは、同院が導入した島津の血管撮影システム第一号です。Triniasにはどのような特徴と魅力があるのでしょうか。より理解を深めるために、上海中山医院の心臓内科教授であり、中国科学院会員である葛均波先生にインタビューを行いました。葛先生に私たちの疑問に答えていただきたいと思います。

上海復旦大学付属中山医院

上海復旦大学付属中山医院

中国科学院院士 心臓内科教授 葛均波

中国科学院院士 心臓内科教授 葛均波

Q1 復旦大学付属中山医院の心臓内科の歴史について教えてください。

A1
中山医院は、1937年に孫中山先生の息子である孫科が当時寄付を募り、それにより設立された最初の国立病院です。1948年、当時の中国における心臓血管分野の先駆者らとともに心臓内科を設立しました。その最も代表的なメンバーは、陶寿淇教授です。1948年、陶先生は中山医院に現在の心臓内科の前身となる、心臓内科グループを設立しました。1958年になると、上海心臓血管病研究所が設立され、心臓や血管疾病の予防、診断、治療だけでなく、心臓内科や心臓外科、および一部の疫学に関連する研究に注力して取り組みました。
当初、心臓内科の病床数は非常に少なく、1999年、私がちょうど帰国したばかりの頃、中山医院の心臓内科の病床数は80床あまり、心臓外科は40床あまりしかありませんでした。それは主に、当時は冠状動脈硬化による心臓病の発生率が低く、それに対して高血圧、心筋炎などの疾病がより多く見られたためですが、改革開放後、人々の生活水準向上に伴い、冠状動脈硬化による心臓病が主となる疾病が主流になってきました。当初、放射線科と共同でカテーテル検査室を使用する必要がありましたが、現在では独立した9室の心臓内科専用のカテーテル室を持つまでに発展し、PCI症例数も、当初の80数件から現在の年間8,000件以上にまで増加しました。現在、心臓内科の病床数は320床、心臓外科の病床数は150床です。また、他にも29床のCCU集中治療室と41床のICUがあります。この急速な発展の要因は、主に2つあり、1つは専門分野の発展ニーズへの順応、次いで中国における冠状動脈硬化による心臓病の発生率の爆発的な増加によるものであると認識しています。

Q2 島津のTriniasを選んだ理由をお聞かせください。

A2
以前の、DSAがまだイメージインテンシファイアの時代にあったときから、私は島津の存在を知っていました。ただ、残念なことに当時、当院に島津のシステムは導入されていませんでしたが、今日のような、フラットパネルの時代になってから、私はいくつかの国際会議でよく島津のフラットパネル式のDSAを目にしていました。それは、デザインが非常にコンパクトで、画質が良く、放射線量が非常に低く、現在の中国の心臓内科の治療ニーズをほぼ満たしているものでした。
ここで、特に強調したいことは、中国国内の症例が急増していることから、当院は放射線量の高さを非常に懸念しているということです。当院の葛雷教授により、7.5フレームと15フレームを使用した場合の、複雑な病変の治療情況について論説が発表され、議論が行われたことがあります。一般的な血管造影検査や簡単な症例の場合では、手技時間が短いため、15フレームを使っても、患者さんに大きな影響はありませんが、CTOなどの複雑な病変を治療する場合は、4~5時間程かかります。そこで、患者と医師や技師の受ける影響を考慮すると、7.5フレームと15フレームでは非常に大きな違いがあります。また、短期間で複数回のインタベーション治療を受けると、患者の背中によく放射性火傷が残されてしまいます。この火傷を治療するには、皮膚を切除して植皮しなければなりません。同時に、それに伴って腫瘍の発生率も高まります。それゆえ、患者の身体的負担を減らすためにも、当院ではCTO治療を行う際は7.5フレームモードを積極的に使用しています。ただ、低フレームレートモードを使用した場合、通常、画質の低下やバルーン、ガイドワイヤなどのデバイスによるアーチファクトというマイナス面が生じてしまうものです。長時間に及ぶ手技の場合、医師や技師が見ても画質が曖昧で粗く、アーチファクトによっても視覚的な疲労がもたらされます。しかし、島津の最新画像処理技術のおかげで、Triniasは7.5フレームモードであってもパフォーマンスが非常に優れており、デバイスのアーチファクトを除去しながら高画質を保つことができるため、医師や技師は鮮明な画像を見ることができ、より優れた手技を達成することができます。また、比較してみると、Triniasの放射線管理は業界トップレベルで、その放射線量は、さまざまな臨床や病症に対しても、より低いということが分かりました。これは非常に優れた点です。画像の鮮明さを保証するだけでなく、放射線量を最小限に抑え、患者を守るとともに医師や技師を守ることができます。これが、私がTriniasを選んだ主な理由の1つです。

CTO術中造影で鮮明に描出されるデバイス

CTO術中造影で鮮明に描出されるデバイス

CTO術中造影

CTO術中造影

鮮明に描出される各デバイス

鮮明に描出される各デバイス

細い血管まで観察できる

細い血管まで観察できる

Q3 Triniasのどのアプリケーション機能に魅力を感じますか。

A3
個人的に、Triniasは非常に優れたシステムだと思っています。それは、まず画質が高く、次に放射線量が低く、次にステント強調技術SCORE StentViewなどの独自の機能を備えているためです。ご存じのとおり、ステントを留置させる際は、ステントの位置を確認するために、ステントの近位端と遠位端はとにかく正確に示す必要がありますが、通常の透視モードではうまく示せない場合があります。このような場合、SCORE StentViewを用いることでステントの位置を非常に明確に示すことができるようになります。さらに、もう1つ、ステントを植え込んでから、ステントが完全に開いていることを確認する必要があり、これは治療効果に関係するので、非常に重要なことですが、石灰化が非常に深刻な場合、造影時に一見すると特に問題がなくても、実際はステントが完全には開いていないということがあります。SCORE StentViewは、優秀な補助的機能を提供してくれます。これにより、優れた治療効果を得ることができ、患者の予後にとっての一助ともなります。

Overlapの確認

Overlapの確認

ステント拡張効果の確認

ステント拡張効果の確認

Q4 島津は日本企業であり、日本はPCI治療の先駆者として豊富な経験を持っていますが、どの点について学ぶ価値があると思われますか。

A4
中山医院は近年、日本との緊密な学術交流に積極的に取り組んでいます。そこから、日本人の専門家は手技に絶えず進歩を求め、努力していることが分かり、これは日本製品同様に「perfect」を追求しているのだと感じました。中国には、ステントを留置さえすれば万事めでたし、とあまり深く考えていない医師がいるところもあります。しかし、日本にはインタベーションをするために最大限の努力を払っている仲間もいます。中国の若い医師はその成長過程においてこの精神を学ぶ必要があり、この点で学術交流は非常に大きな意味があると考えています。私は最近、村松俊哉教授と日本のTMTと協力してCTO基本研修コースを開催しました。このプログラムコースを通じて、若い世代の医師に対し、正確な手技、最高の手技ができるよう指導できればと願っています。当時、私と村松教授は、テクニックから個人的な理念、さらには画像解析までひとつひとつ解説を行いながら、手技のデモンストレーションを行いました。先ほど述べたとおり、島津のTriniasシステムにはSCORE StentViewというアプリケーション機能があるため、ステントの現在の動的画像をリアルタイムに提供してくれます。これは将来的に我々医師がステントを正確に留置させるための補助的手段となり、それにより病変とステントの位置をリアルタイムで判断できるようになると個人的に考えています。最も重要なこととして、一見するとステントが開いた状態であっても、石灰化の拡張による影響を把握できず、壁への貼り付きが不十分なところがまだあるのではないか、という点ですが、SCORE StentViewを使用することにより、ステントが完全に開いていることを確認することができます。言い換えると、SCORE StentViewは、リアルタイムで完璧なステント留置を実現できるため、最適な結果を得るのに役立ちます。

Q5 最後に、先輩医師として、若い医師にメッセージをお願いします。

A5
インタベーションの発展により、中国のPCI症例数は1998年の5,000件から2018年には925,600件にまで増加しました。その症例数は、2019年には間違いなく100万件を超え、米国を上回り中国は世界のインタベーション大国になると確信しています。患者の増加に対処するためには、PCI治療技術を習得した、より多くの若い医師が必要になってきます。大都市にある上位3つの病院だけでなく、デバイスや技術の改善により、一部の優れた県立病院でのインタベーション治療を推奨しています。確かな基本的スキルを習得し、新しい技術や新しいデバイスを学ぶ精神を保つことが大切です。
この数年間、我々の隣国である日本では、これまで日本の四天王とされた、鈴木孝彦教授、加藤修教授、光藤和明教授、故玉井秀男教授から、今日の、土金悦夫教授、落合正彦教授、松村俊哉教授、朝倉靖教授、山根正久教授らへと、新旧の引継ぎ交代が非常に順調であると見受けられます。彼らは積極的に学術交流を促進し、日中の医師間の関係も非常に良好で、誰もがお互いから学び、お互いを探求し、自身の技術やスキルを全員と共有しています。
ここから、私が若手に言いたいのは、まずインタベーションの基本的知識をしっかりと身につけること、次に複雑で高度であると考えられている症例に挑戦し、患者により良い治療を提供することが必要である、ということです。中国では患者が非常に多いため、より高度な技術、特にCTO治療技術を習得したより多くの若い医師が必要とされています。もちろん、医療の発展は装置や消耗品の継続的な発展と切り離せないものであり、ここからも現在の島津のTriniasは勧めるに値する高い価値のある装置だと言えます。