Minimally Invasive Experience

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Minimally Invasive治療の実践 -太田記念病院様の取り組み-

近年、複雑化・高度化している血管内治療では、被ばく低減・造影剤の削減・検査時間の短縮を実現できる血管撮影システムが求められています。当社の最新血管撮影システム「Trinias series」は、低侵襲治療を実現する様々な機能を有しています。
今回は、「線量のさらなる低減」を実現するための、透視Lowモード・撮影Lowモード・透視保存機能の活用に着目します。これらの機能を活用されているSUBARU健康保険組合太田記念病院様(群馬県)の低線量運用のための取り組みをご紹介します。

1. 透視Lowモードの使用

PCIなどの血管内治療では、治療全体において透視時間の占める割合が多く、治療対象の病変が複雑であるほど透視時間の割合は高くなっていきます。シンプルなPCIの場合、透視時間は撮影時間の10倍程度と言われ、透視線量の低減は線量管理の観点から非常に重要視されています。同院では透視による線量の低減を目的とし、透視プログラムとしてフレームレート7.5ppsのLowモード(7.5pps/Low)を日常的に使用されています。透視Lowモードは透視Normalモードと比較して線量率が44%低減されるため(図参照)、手技を通して大幅な線量率低減が可能となります。また、旧来の装置でフレームレート7.5ppsのモードを使用すると残像が目立ってきますが、Triniasの場合は独自の画像処理技術SCORE PRO Advanceにより残像の発生が抑制されています。「画質は透視Normalモードと比較して遜色なく、手技を妨げない」とのご評価をいただいています。

透視モードによる線量率比較
FOV 8inch、アクリル20cmでの患者照射基準点線量率。
※当社臨床マニュアルに記載の実測値。Low-2とLow-3は計算値。

7.5pps/Lowで収集した透視画像
低線量・低フレームレートだが、残像もなくガイドワイヤを視認できる。

画像診断部 干川 重光 様より一言
当院のカテ室に携わる放射線技師は、カテ室2室に対し13人と夜勤や呼び出しなどの職場環境を考慮して比較的多い人数でローテーションを組んでいます。島津のカテ装置は初めての導入でしたが、SCORE StentViewやSCORE RSMなどは当初から多く利用され治療や診断に有効に活用されて来ました。また今回の被ばく低減の透視Lowモードの導入に関してもスムーズに行え大変使い易い装置となっています。今後もこれらアプリケーションを活かし業務に役立てていきたいと思います。

画像診断部 深沢 正宏 様より一言
近年、デバイス等の進歩により心臓・末梢血管領域において、複雑病変への治療も多く行われています。当院においても、複雑病変への治療は少なくはありません。このため、患者の被ばく低減を大いに考慮した上で、2015年よりTriniasを導入し、透視・撮影共にLowモードを検討し採用しました。SCORE PRO Advanceにより、LowモードでNormalモードと同等の画質が得られ、さらに透視保存と併用することで、低被ばくで治療を行なっています。

現在、同院では患者様の体格によらず透視Lowモードが使用されています。必要に応じて即座に透視Normalモードに切り替えられるように装置設定*1も工夫されており、線量を減らせるときは減らし、条件が厳しいときは線量を十分に確保するという運用を徹底されています。なお、Triniasはさらに2段階の線量率低減設定*2を有しており、ご要望に応じて透視Normalモードから最大約60%の線量率低減が可能となっています。

2. 撮影Lowモードの使用

PCIにおいて、撮影の画質はより良い治療結果のために非常に重要です。例えば、治療対象がCTO病変の場合は微細なコラテラル(側副血行路)の状態が治療戦略に大きく影響を及ぼすため、それらを十分に描出できる画質が重要となります。一方で、撮影の線量率は透視と比較して非常に高いため、撮影線量の低減も効果的だと言えます。
同院は撮影による線量を低減すため、撮影プログラムのLowモード(CAG[15f-15s]/Low])を普段から使用されています。撮影Lowモードは撮影Normalモードと比較して線量率が35%低減(図参照)されます。「背景の粒状度が少し高くなる程度で、血管の診断能は十分である」とのご評価をいただいています。なお、Triniasは撮影プログラムの場合もさらに2段階以上の線量率低減設定*2を有しており、ご要望に応じた線量低減が可能です。
同院の場合は、循環器内科の先生方とカテ室担当の技師の方が相談された上、透視・撮影共にLowモードをデフォルトとして運用されています。同院では医師と技師の活発なコミュニケーションにより線量管理が実施されています。

撮影モードによる線量率の比較
FOV 8inch、アクリル20cmでの患者照射基準点線量率。
※当社臨床マニュアルに記載の実測値。Low-2とLow-3は計算値。

CAG[15f-15s]/Lowで収集した撮影画像
撮影Normalモードより背景のノイズレベルがやや高くなるが、主要な血管は十分に描出されており手技を妨げない。

3. 透視保存の活用

PCIや下肢PPIなどの血管内治療ではバルーン拡張時の様子を画像として保存します。この際に画像を保存する方法は施設により異なります。①撮影で収集する方法、②OneShotで1枚画像として保存する方法、③透視保存を使用して透視画像として保存する方法があり、線量は①最も多く順に低くなります(線量: ①>②>③)。
同院は、透視下でバルーン拡張の様子を観察した後、透視保存によりその様子を記録されています。透視保存はワンボタンで行え、記録は瞬時に完了するため手技の進行が妨げられることはありません。透視保存の実施により、撮影による線量の増加を防いでいます。撮影はコントロール造影・治療時の側枝位置の把握・治療後の確認造影時のみ実施されており、これら以外で記録が必要な全ての場面で透視保存が使用されています。

4. 低線量化への取り組みによる線量低減効果

同院は上記のような取り組みにより、シンプルなPCIでおよそ4割の線量低減*3を実現されました。
また、医師と技師の密接な連携を大切にされており、Lowモード使用の検討も両者が協力して迅速に行われたとのことです。

  • *1 操作室に備えてあるキーボードのファンクションキーに透視Normalモードのプログラムを割り当て。
  • *2 ご要望に応じてサービスマンが設定いたします。
  • *3 透視保存は以前から活用されていたため、透視Lowモードと撮影Lowモードの使用による効果です。