近赤外光イメージング装置(光トポグラフィー検査対応)
入門編
近赤外光イメージング装置とは
近赤外光イメージング装置は、近赤外分光法(NIRS: near-infrared spectroscopy)を用いて脳表面の酸素状態を捉えることで、脳の活動状態をリアルタイムにカラーマッピング表示する装置です。
人間は、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚などの情報を目、耳などの感覚器から取り込み、脳に伝達します。そして脳内に約1000億個存在するニューロンがシナプスを介して相互にそれらの情報を伝達・処理することによって、次の行動を決定します。その時に酸素化ヘモグロビン(oxyHb)は毛細血管を経由して酸素供給を行います。 近赤外光イメージング装置※ は、近赤外分光法(NIRS: near-infrared spectroscopy)を用いてその反応(脳表面の酸素状態)を捉えることで、脳の活動状態を リアルタイムにカラーマッピング表示する装置です。
- ※近赤外モニタや近赤外光脳計測装置とも呼ばれています。
近赤外分光法(NIRS)とは
体の中は、光を透過させる性質と、光を吸収・散乱させる性質があります。この吸収・散乱の程度は光の波長と生体を構成している成分により異なります。特に血液成分のヘモグロビンによって、近赤外光が吸収されますが、そこに酸素がついていると、その吸収の度合いが変化します。NIRSは近赤外線によりその度合いを測定し、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン(deoxyHb)の変化量を測定する方法です。
近赤外線とはどんな光
近赤外線とは、可視光線よりも波長の長い光です。通常、近赤外光イメージング装置では700~900nmの光を使用します。
光の波長による分類

なぜ近赤外線を使うの
酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの、光を吸収する強さ(スペクトル)は下図のとおりです。可視光(400~700nm)はヘモグロビンやその他の生体構成物質での吸収率が大きく、光の強度が1/10に減衰するまでに進むことのできる距離が1mm以下です。また、近赤外線よりも長い波長域の光は水での吸収率が大きいため、生体内をほとんど進むことができません。一方、近赤外線は生体内での吸収率が少なく約10倍の距離を進むことができます。このため、より深い所の情報を得ることができる近赤外線を使います。

何がわかりますか
NIRSで用いる波長領域(右図の700~900nm付近)では酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)と脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb)のスペクトルが大きく違います。この違いから、組織中の
- 酸素化ヘモグロビン(oxyHb)
- 脱酸素化ヘモグロビン(deoxyHb)
それぞれの変化量が計算できます。
この2つの項目より、以下の項目を計算し、同時に表示できます。
- 総ヘモグロビン(totalHb)=oxyHb+deoxyHb血液量変化
生体で酸素を運んでいるのはヘモグロビンですので、脳への酸素の供給、代謝の状態が推測できます。
どのように計測・画像化しますか
近赤外光は比較的生体を透過するものの、人間の頭部を透過させることが困難なため、光ファイバを用いて入射します。光ファイバは、被検者に被せた専用のファイバホルダに、頭皮に密着させるように差し込みます。入射された近赤外線は大脳皮質で散乱、吸収されながら、一部が頭皮上に戻ります。これを受光部の光ファイバで検出します。検出した光は、電気信号に変換しModified Lambert Beer則 に則って酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビンの変化量を算出します。

前項「近赤外光イメージング装置とは」の通り、本装置は脳の活動状態を2次元的にカラーマッピング 表示する装置です。このため計測時には光ファイバを目的部位に合わせ配置(差し込み)します。右図に配置の一例を示します。赤(送光点)と青(受光点)の中間点が、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの変化が計測された位置と仮定されています。この中間点の数が測定チャンネル数と呼ばれています。
ファイバの配置例

計測された酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビン、その和である総ヘモグロビンの濃度変化は、下図のように、チャンネル毎にリアルタイムに時系列データとして表示されます。これら全チャンネルのデータをカラー表示し、さらに補間処理をすることにより、ヘモグロビンの濃度変化分布が2次元マッピング画像としてモニタに動画表示されます。計測から画像表示までは約0.1秒でリアルタイムに観察できます。
